
そこはラブホテルの一室だった。
彼女とのデートコースの最後は大抵ここだった。
一戦終えて心地よい疲労感に包まれているときに、僕は以前より本で勉強していた催眠を彼女に試してみようと思った。
- 「ねぇ、ちょっと手をこうしてみて。」
と切り出し、観念運動による催眠方法を試みた。
- 「ほら、手がだんだんくっついて行くだろう?」
- 『あ・・・』
- 「くっついてもそのまま指先をじっと見て・・・」
- 「今度は目が開いていられなくなるよ。」
- 「手がだんだん下がって、膝に乗るよ。」
- 「僕が手を叩くと、君の腕はもう上がらなくなる。」
僕が手首を軽く引いてもガチガチに固まっていたとき、催眠術の効果を初めて実感した。
自分の力で初めて他人を催眠状態にできた僕は有頂天だった。
(終わり)